【Day9 part2】イヌにどつかれ不良にどつかれる 2022.08.24
前回の続きです。
といってもこの日の夜に起こった出来事をちょっとシェアして書いたという次第です。
ちなみにぼくは日本にいた頃はイヌがしぬほど好きで、この旅の資金集めのために働いていたバイトでは休憩時間中ずっとイヌの動画を見てるほどでしたがこの日を境にすこし嫌いになりました・。・;
さて前回の続きです。
州境から中心地まではそこそこの距離があり、中心に着く頃には完全に陽が落ちてしまいました。
本来なら日没1時間前くらいには着くつもりでしたが、日光が想像以上にきつかったのと肝臓がバグってて思うように身体が動きませんでした。
中心地に来ましたが道の舗装はこんな感じです。
全く舗装されてなくて車ですらアヒルレベルの鈍行で走ってます。街として機能してる?大丈夫?
こんなもんなのでぼくももちろんまともに走れるわけがなく、かといって自転車を降りる気にもならなかったので立ちゴケ寸前レベルの鈍行でゆっくり走っていました。
そのときです
隣の家からありえないくらい攻撃的な犬が急に飛び出してきて爆吠えしながら全力で追っかけてきました。
当時はこうした犬の対処法が全くわからなかったのでとにかく逃げることしかできず、全力で逃げました。おまけに渡航前から狂犬病のことは散々聞かされていて、野良犬やこうした野蛮な飼い犬が本当に怖くて相当パニックになりました。
犬は動くものを追いかけるので自転車で走れば走るほど悪循環になることもつゆ知らずとにかく死ぬ気で走りました。それがタブーだとも知らず...
ただ走って逃げただけだったらよかったんですが、街の舗装が舗装です。
さっきの写真じゃうまく伝わってないと思うのですが
実際はこんな絶望的な道を走っていました。
しかも犬から逃げるために40km/hくらいで...
犬は何とか振り払えたのですがパンクが不安です。
と思った矢先でした。
テントがない。
走って逃げてる途中でテントを落としました...
テントのポールとレインフライはあるのですが、肝心のテント本体がどこを探してもありません。
完全に血の気が引きました。
急いでライト全点灯で来た道を引き返します。
落とした間に誰かに拾われて盗まれたら洒落になりません。
こんな感じで道を戻ってひたすらウロウロと探してました。
砂漠を100km走った後で真っ暗な何もない夜の道を、失くしたテントを探して彷徨ってました。
なんていうか、こんな目に遭わなきゃいけないのっていう苛立ちと悲しみと悔しさと何よりも焦りでいっぱいでした。
失くした場所は犬に追いかけられた場所から失くしたことに気づいた場所まで...
しかしいつまで経っても、何往復しても見つかりません...
多分誰かに既に盗まれたと思います。
さすがに結構なレベルで絶望しました。
実はこのテント、とある企業から支給していただいたものでそれをたった1回使っただけで失くしてしまいました。
それに対する焦りもありますが、何よりアウトドア用品店なんてあるわけもない砂漠のオアシスのど真ん中でテントを失くしたという事実が一番やばいです。
テント無しでは、野宿無しではこんな何もない場所なんてこえられるわけがありません。
ウズベクだけじゃないです。
基本的にぼくの旅って全ての日程において金欠極めてるので先進国、特に西欧や北欧、アメリカ沿岸部、オーストラリアなどの物価が高い国では野宿メインで行こうと思ってました。
その予定すらも全て崩れました。あのクソ犬のせいで。
心細さもあってさすがに泣きそうになりました。旅を初めて1週間でこうなるとは思ってませんでした。
そうして絶望して泣きそうになりながら立ち尽くしていると、道の反対から青年たちがウズベク語でぼくに何か叫んでいます。
さすがに疲れとメンブレで反応を返す余裕もなく適当にスルーして先に行こうとしたら、青年5人くらいがみんなこっちに来てぼくの行く手を阻止するかのように取り囲みました。
本来ならこんなの誰が見てもやばい状況でしたが、もう全てが嫌になっていてこんな感じで完全に無抵抗になっていました。
もう自転車でも財布でもパスポートでも何でも好きなものでも取れと、彼らの言葉を上の空で聞いていると段々青年だけでなく他の村人も集まってきて気付けば周りに人だかりができてきました。
しかし誰もぼくの荷物をとる気配がありません。
ただひたすらによくわからない言語で何かを伝えてきます。
ここら辺からようやく気づきました。
この人たちはただ助けに来てくれたんだと。
一抹の希望が見えました。
そして集まった群衆の中に奇跡的に一人だけ英語がすこし話せる人がいました。
「荷物を無くした。犬に追いかけられてどこかに落とした。」
必死になってその人に伝えます。
すると青年たちが
「おい!!この日本人が道で落とし物したそうだぞ!!」
「みんなで探すから手伝えるやつ集まれ!!!」
みたいなことを村の人たちに大声で呼びかけてもっと人を集めました。
都会と違って郊外では人と人との距離が近いという話は聞いていましたがまさかこれほどとは、と思い唖然としていました。
集まった人はみなまずハグと握手をかわし、青年づてに事情を聞きます。
疲れと心細さをあってか、だんだん人が集まってくる様子を見て涙が出そうになりました。
ある者は警察に電話し、ある者は動揺しきったぼくをなだめてくれ、なぜこんな顔も肌の色も言葉も全てが違う異国の見知らぬ人間に対して、なぜ善意だけでここまで助けることができるんだろうと、いい意味で理解ができませんでした。
もうここまできたらもはやテントは見つからなくてもいいかな、なんても思ってしまうほどでした。
ま、とはいっても見つかればそれでハッピーにこしたことはないので人も集まったことですし探しに行きます。
約10人がかりでスマホのライトを照らしながら道を散策します。
(ちゃんと撮ったはずなのに上手く撮れてなかった、かなしい)
そうしてみなで探すこと15分ほど、道を何往復かしましたが、ついにテントを見つけることは叶いませんでした。
と思っていると
一人の青年が「あれを見ろ!」とぼくの自転車を指さして叫びます。
なんのことかと思って自転車をよく見てみると
なんと、テントは自転車のフロントキャリアとタイヤの間に引っかかっていただけでした...
実際、結んでいた結束バンドにテントの紐がギリギリ引っ付いていて、それが自転車に乗っている状態だと視認できず、無くしたと勘違いしていた、というオチでした・。・:::
なんていうか、はい。まず恥ずかしさと申し訳なさで死にたくなりました。てか死にました。
大山鳴動して鼠一匹とはまさにこのこと。村全体を巻き込んだ壮絶なテント騒動は意外や意外な形でハッピーエンドを迎えました。
ちなみにぼくに最初に声をかけた青年たちには爆笑され、「何やってんだお前」と言わんばかりに笑顔でどつかれまくりました。
その中に一人柔道をやっていた人がいてその人のタックルは割とマジで痛かったです。自戒。
これで終わりと思いきや、今度は青年たちが「今日泊まる場所は決まってんのか!??決まってないならこっちにいいホステルがあるぞ!」と言って半ば無理やりぼくを連れ出しました。
本当は安いホステルを調べてそこに行こうかと思ってましたが、「そのホステルはおれらの知り合いがやっててめっちゃいいとこだから」といって電話までしてくれたし、何よりテントの恩もあって無下に断るのも悪いと思ったのでついて行きました。
こうしてホステルにチェックインすると青年たちともようやくお別れです。
テントが無事見つかったことの祝福、これからの旅の激励などを受け、最後はどつかれながらみんなと写真を撮ってばいばいしました。
見知らぬ土地で絶望的な状況に追い込まれそこからあらゆる人の優しさに救われた、色々な意味で忙しい夜は記憶に残る一夜となりました。
状況が状況で写真が全然撮れていなくて冗長な文章記事になってしまいましたが、それでもこの夜の体験は書き留めておきたいと思ったので記事にしました。
さて翌日はホステルから。次の記事へ続きます。